基本情報
亜鉛(Zinc)は原子番号30、元素記号Znの亜鉛族元素の一つです。
亜鉛は、体内におよそ2,000mg存在し、主に骨格筋、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓などに分布しています。
体内の亜鉛は、腸管粘膜の脱落などに伴う排泄、精液または月経血などによって排泄され、尿中の排泄量は少ないです。
亜鉛の恒常性は、亜鉛トランスポーターによる亜鉛の細胞内外への輸送とメタロチオネインによる貯蔵によって維持されています。
機能
亜鉛は細胞代謝の多くの側面に関与しています。
免疫機能、タンパク質合成、創傷治癒 、DNA合成、細胞分裂などおよそ100種類の酵素の活性に必要です。
また、妊娠、小児期、青年期の正常な成長と発達をサポートし、味覚と嗅覚に必要も必要な栄養素です。
摂取量の過不足によるリスク
摂取不足によるリスク
- 発育障害、食欲不振、免疫機能障害、体重減少、創傷治癒の遅延、味覚異常、精神的無気力を引き起こす可能性があります。
- 重度の場合、脱毛、下痢、性腺発育障害、男性の性腺機能低下症、および目と皮膚の病変を引き起こします。
過剰摂取によるリスク
- 亜鉛の毒性は、急性と慢性の両方の形で発生する可能性があります。
- 急性の副作用には、吐き気、嘔吐、食欲不振、腹部けいれん、下痢、頭痛などがあります。
- 1日あたり150〜450mgの慢性的な亜鉛の過剰摂取は、銅の吸収阻害による銅欠乏がもたらすスーパーオキシドジスムターゼ活性の低下、鉄の吸収阻害が原因の貧血、免疫機能の低下などを引き起こします。
摂取量
必要量
日本人を対象とした報告がないため、必要量はアメリカ・カナダの食事摂取基準を参考にし、要因加算法により算定されました。
イギリスとアメリカの成人男性を対象にした研究から得られた計算式(真の吸収量=1.113×摂取量0.5462)により、摂取量は、男性9.117mg、女性6.378mgとなります。
これらの値を18〜29 歳(参照体重:男性64.5kg、女性50.3kg)における必要量とし、体重比の0.75乗を用いて必要量が算定されました。
妊婦の血清中の亜鉛濃度は、妊娠期間が進むにつれて低下するという報告があります。
このことから妊娠に伴う付加量が必要と判断され、妊娠期間中の亜鉛の平均蓄積量(0.40mg)を成人の一般的な吸収率(30%)で除して得られる1.33mgを丸めた1mgが、妊婦への付加量とされました。
授乳婦については、日本人の母乳中の亜鉛濃度の平均値(2.01mg/L)を日本人の母乳中の亜鉛濃度の代表値として、0〜5か月児の基準哺乳量(0.78L)を乗じた1.57mgを授乳婦の吸収率(53%)で除して得られる2.96mgを丸めた3mgが授乳婦の付加量とされました。
必要量を決めるために考慮すべき事項
腸管以外への体外排泄量(尿、体表、精液または月経血)
腸管以外への体外排泄量は、尿中排泄量、体表消失量、精液中又は月経血中消失量の三つに分けられます。
アメリカ・カナダの食事摂取基準では、参照体重76kgの男性の尿中排泄量、体表消失量、精液中消失量をそれぞれ0.63mg、0.54mg、0.1mg、参照体重61kgの女性の尿中排泄量、体表消失量、月経血中消失量をそれぞれ0.44mg、0.46mg、0.1 mgと見積もっています。
腸管以外への体外排泄量は、日本人の男女それぞれの体重との比の0.75乗を用いて算出されました。
- 男性:(0.63+0.54+0.1)×(体重(kg)÷76)0.75
- 女性:(0.44+0.46+0.1)×(体重(kg)÷61)0.75
腸管内因性排泄量(組織から腸管へ排泄されて糞便中へ移行した量)
アメリカ・カナダの食事摂取基準では、亜鉛摂取量20mg以下のイギリスとアメリカの成人男性を対象とした報告から、腸管内因性排泄量は、次の式が成立するとされました。
0.6280×真の吸収量+0.2784(mg)
この式は、男女間の体重差にかかわらず適用できるとしていることから、日本人の成人男女にもそのまま適用できると判断されました。
真の吸収量
腸管以外への体外排泄量と腸管内因性排泄量の合計から、総排泄量が求められます。
- 男性:(0.63+0.54+0.1)×(体重(kg)÷76)0.75+0.6280×真の吸収量+0.2784
- 女性:(0.44+0.46+0.1)×(体重(kg)÷61)0.75+0.6280×真の吸収量+0.2784
これらの式から、総排泄量と真の吸収量が同じ値となる値は、男性はおよそ3.722mg、女性はおよそ3.062mgになります。
上限量
アメリカ人女性において、50mgの亜鉛サプリメントを一定期間継続使用した報告によると、HDLコレステロールの低下や、血清フェリチン、ヘマトクリット、スーパーオキシドジスムターゼ活性の低下を起こしています。
これらの女性(参照体重:61kg)の食事由来の亜鉛摂取量をアメリカ人女性の亜鉛摂取量の平均値(10mg)と同じとすると、総摂取量は60mgとなる。
これら値から0.66mg/体重(kg)が上限量とされました。
推奨量
推奨量は、必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とされています。
付加量についてはそれぞれ、妊婦2.0mg、授乳婦4.0mgとされました。
摂取源
カキは非常に多くの亜鉛を多く含んでいますが、普段の食事では牛肉の赤身、鶏肉、カニやエビなどの海産物が摂取量の大部分を占めています。
その他の優れた食料源には、豆類、ナッツ類、全粒穀物、乳製品などがあります。
全粒穀物、マメ類などに含まれるフィチン酸塩は、亜鉛と結合し、その吸収を阻害するため、動物性食品と比べ植物性食品からの亜鉛の生体利用率は低くなっています。
注意
亜鉛は特定の医薬品との間で相互作用が認められ、一部の医薬品によっては亜鉛濃度に有害な作用を及ぼす場合があるため、亜鉛摂取については医療スタッフと相談してください。
抗生物質
キノロン系抗生物質とテトラサイクリン系抗生物質は消化管内の亜鉛と相互作用し、亜鉛と抗生物質の両方の吸収を阻害する可能性があります。
ペニシラミン
亜鉛は、関節リウマチの治療などに使用されるペニシラミンの吸収と作用を低下させる可能性があります。
利尿薬
クロルタリドンやヒドロクロロチアジドなどのサイアザイド系利尿薬は、尿中の亜鉛排泄を増加させ、体内の亜鉛濃度の低下を招く可能性があります。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました!
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このページは、厚生労働省の日本人の食事摂取基準と、ODSのDietary Supplement Fact Sheetsの各栄養素ごとの情報を参考にし作成しています。
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