鉄(Fe)

iron_Eyechatch 栄養解説
この記事は約5分で読めます。
広告

基本情報

鉄(Iron)は原子番号26、元素記号Feの遷移金属元素の一つです。
成人の体内には3〜4gの鉄が存在しており、そのほとんどはヘモグロビンに含まれています。
通常、尿、糞便、胃腸管、および皮膚からの損失量は少量です。
ただ、失血のため、月経中の女性は損失が大きくなります。

機能

鉄は、肺から組織に酸素を移動させる赤色素タンパク質であるヘモグロビンの必須成分です。
そのほか、酸素を供給する色素タンパク質であるミオグロビンの成分として、筋肉の代謝などに関与しています。
また、物理的な成長、神経発達、細胞機能、および一部のホルモンの合成にも必要です。

摂取量の過不足によるリスク

摂取不足によるリスク

  • 鉄欠乏症は、貧しい食生活、吸収不良障害、および失血に関連しているため、鉄欠乏症の人々は通常、他の栄養素欠乏症を患っています。
  • 軽度の欠乏の場合、血清フェリチン濃度と骨髄中の鉄の濃度が低下します。
  • 重度の場合、鉄欠乏性貧血を引き起こします。
    鉄欠乏性貧血に関連する機能障害には、胃腸障害、倦怠感、集中力・認知機能・免疫機能・運動機能の低下などがあります。
    幼児や子供では、学習困難につながる可能性があります。
  • 鉄欠乏症は貧血の最も一般的な原因ですが、他の微量栄養素(葉酸やビタミンB12など)の欠乏や他の要因(慢性感染症や炎症など)によって、さまざまな形態の貧血を引き起こす可能性があります。

過剰摂取によるリスク

  • 通常の食生活で過剰摂取が生じる可能性はないですが、サプリメントや鉄強化食品、貧血治療用の鉄製剤の不適切な利用によって過剰摂取が生じる可能性があります。
  • 高齢女性を対象とした、サプリンメント類の使用と総死亡率との関連を検討した研究において、鉄サプリメントの使用が総死亡率を上昇させることが認められています。
  • 成人では、組織への鉄の蓄積が多くの慢性疾患の発症を促進することが報告されています。
  • サプリメントや医薬品などからの急性摂取量は、胃の不調、便秘、吐き気、腹痛、嘔吐、および失神につながる可能性があります。
  • 過剰摂取によって臓器不全、昏睡、痙攣、最悪の場合、死に至ります。

摂取量

必要量

鉄の必要量と推奨量は、要因加算法を用いて算定されています。
要因加算法に有用な研究は多数存在するも、日本人を対象とした研究は不十分であることから、アメリカ・カナダの食事摂取基準に従い、体重と月経血量等については日本人の値を用いて必要量が算定されました。
必要量は、男性・月経のない女性では、基本的鉄損失÷吸収率とし、月経のある女性では、(基本的鉄損失+月経血による鉄損失)÷吸収率とされました。
妊娠期に必要な鉄は、基本的鉄損失に加えて考慮すべき項目があります。

  1. 胎児の成長に伴う鉄貯蔵
  2. 臍帯・胎盤中への鉄貯蔵
  3. 循環血液量の増加に伴う赤血球量の増加による鉄需要の増加

これらの値は、妊娠の初期、中期、後期によって異なり、付加量は、初期2.0mg、中期・後期8.0mgとされました。
また、妊娠中期以降に、特に非ヘム鉄の吸収率が著しく上昇することが報告されていますが、分娩後は非妊娠時の水準に戻ることより、授乳婦の鉄の吸収率は非妊娠時と同じ15%とされました。
そして、母乳中鉄濃度(0.35 mg/L)、基準哺乳量(0.78 L)、吸収率(15%)から算出された2.0 mgが授乳婦の付加量されました。

必要量を決めるために考慮すべき事項

基本的鉄損失

平均体重68.6 kgで測定された基本的鉄損失は、平均0.96mgでした。
このことから基本的鉄損失は、平均値を体重比の0.75乗を用いて外挿して算出されました。

計算式

(体重(kg)÷平均体重(68.6kg))0.75×平均基本的鉄損失(0.96g)

月経血による鉄損失

月経血への鉄損失は、鉄欠乏性貧血の発生と強く関連しています。
20歳前後の日本人を対象にした複数の研究をまとめた報告によると、1回当たりの月経血量の平均値は37.0mL、月経周期の中央値は31日とされています。
このことから月経血による鉄損失を補うために必要な1日当たりの摂取量は、およそ3.64mgとされました。

計算式

月経血量(mL)÷月経周期(日)×ヘモグロビン濃度(0.135g/mL)×ヘモグロビン中の鉄濃度(3.39mg/g)÷吸収率(0.15)

吸収率

最近の研究では、ヘム鉄の吸収率は50%、非ヘム鉄の吸収率は15%とされています。
鉄の吸収率は、食事中の構成比、鉄の吸収促進、阻害要因となる栄養素などによって異なるため、吸収率の代表値の設定は困難と考えられています。
日本人の鉄の主な給源が植物性食品であり、非ヘム鉄の摂取量が多いことを考慮して、吸収率は15%とされました。

上限量

臓器への鉄の沈着は、様々な慢性疾患の発症リスクを高めることが報告されています。
鉄を大量に含むビールの常習的な飲用や鉄鍋からの鉄の混入によって1日当たりの鉄摂取量が50mgを超える南アフリカのバンツー族では、バンツー鉄沈着症(Bantu siderosis)が中年男性に発生し
ます。
この症状は、単純な鉄の大量摂取によって生じたと考えられていることなどから、男性は50mg、女性は男性との体重差を考慮し、40mgが上限量とされました。

推奨量

推奨量は、必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とされています。
付加量についてはそれぞれ、妊娠初期2.5mg、妊娠中期・後期9.5mg、授乳婦2.5mgとされました。

摂取源

食品中の鉄は、たんぱく質に結合したヘム鉄と無機鉄である非ヘム鉄に分けられる。
ヘム鉄は、赤身の肉やシーフードが豊富に含まれており、非ヘム鉄は、ナッツ、豆、野菜などに含まれています。

注意

鉄は特定の医薬品との間で相互作用が認められ、一部の医薬品によっては鉄濃度に有害な作用を及ぼす場合があるため、鉄摂取については医療スタッフと相談してください。

レボドパ

キレート化された鉄サプリメントが、パーキンソン病やむずむず脚症候群の治療に使用されるレボドパの吸収を減らす可能性があります。

レボチロキシン

甲状腺機能低下症、甲状腺腫、および甲状腺がんの治療に使用されるレボチロキシンと鉄を同時に摂取すると、一部の患者でレボチロキシンの有効性が臨床的に有意に低下する可能性があります。

プロトンポンプ阻害剤

胃酸は、食事からの非ヘム鉄の吸収に重要な役割を果たしています。
ランソプラゾールやオメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤は、胃内容物の酸性度を低下させるため、鉄の吸収を低下させる可能性があります。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました!
本ページでわからない点などがあれば、お気軽にお問い合わせページよりお問い合わせください。
(WordPress勉強中のため返信に時間がかかるかもしれませんのでご了承ください。)

このページは、厚生労働省の日本人の食事摂取基準と、ODSのDietary Supplement Fact Sheetsの各栄養素ごとの情報を参考にし作成しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました