基本情報
ヨウ素(Iodine)は原子番号53、元素記号 I のハロゲン元素の一つである。
ヨウ素はヨウ化物として、ほぼ完全に吸収されます。
ヨウ化物が血液中に循環すると、甲状腺はホルモン合成に適した量でヨウ化物を濃縮し、残りの大部分は尿中に排泄されます。
成人の体内には、およそ15〜20mgのヨウ素が存在しており、その70%〜80%が甲状腺に存在しています。
機能
甲状腺に存在するヨウ素は、甲状腺ホルモンを構成します。
甲状腺ホルモンは、生殖、成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させます。
また、甲状腺ホルモンは、胎児の脳、末梢組織、骨格などの発達と成長を促します。
摂取量の過不足によるリスク
摂取不足によるリスク
- 慢性的なヨウ素欠乏は、甲状腺刺激ホルモンの分泌亢進、甲状腺の異常肥大、又は過形成(甲状腺腫)を起こし、甲状腺機能を低下させます。
- 妊娠中のヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常及び胎児甲状腺機能低下を招きます。
- 重度の先天性甲状腺機能低下症は全般的な精神遅滞、低身長などを起こします。
また、重度の神経学的障害を伴わず、甲状腺の萎縮と線維化を伴う粘液水腫型胎生甲状腺機能低下症を示すこともあります。 - 乳児や子供では、それほど深刻ではないヨウ素欠乏症であっても、平均よりもやや低いIQが測定されるなどの神経発達障害を引き起こす可能性があります
過剰摂取によるリスク
甲状腺でのヨウ素の有機化反応が阻害されるが、甲状腺へのヨウ素輸送が低下する現象が起こり、甲状腺ホルモンの生成量は基準範囲に維持される。
しかし、脱出現象が長期にわたれば、甲状腺ホルモンの合成に必要なヨウ素が不足するために甲状腺ホルモン合成量は低下し、軽度の場合には甲状腺機能低下、重度の場合には甲状腺腫が発生する。
摂取量
必要量
適切なヨウ素の状態では、体内のヨウ素濃度は一定となるので、甲状腺へのヨウ素蓄積量を必要量とみなせます。
アメリカの18人の成人男女(平均年齢26歳、平均体重78.2kg)を対象とした報告では、甲状腺へのヨウ素蓄積量の平均値を96.5µgとしています。
また、274人の男女を対象とした研究では、ヨウ素蓄積量の平均値を91.2µgと報告しています。
これらの値の中間値を丸めた95µgが必要量とされました。
妊婦については、新生児の甲状腺内のヨウ素量(50〜100µg)の中間値である 75µgが付加量とされました。
また、授乳によって失われるヨウ素を補うには100µgで十分と考え、授乳婦の付加量は100µgとされました。
上限量
日本人のヨウ素摂取量は、昆布製品などの海藻類をあまり含まない献立での500µg未満を基本に、間欠的に摂取する海藻類を含む献立分が加わり、平均で1〜3mgと推定されています。
連日1.7mgのヨウ素(ヨウ化物)を摂取した人に甲状腺機能低下が生じることから、アメリカ・カナダの食事摂取基準は成人のヨウ素の上限量を1.1mgとしています。
ただ、昆布に含まれるヨウ素の吸収率がヨウ化物よりも低いとする報告があることと、大豆製品に含まれるイソフラボンなどが、ヨウ素と不可逆的に結合することによって、ヨウ素の吸収や利用を妨げるため、この値は昆布や大豆製品を摂取する日本人の上限量に適用できないと判断されました。
日本人のヨウ素摂取量は平均で甲状腺機能低下や甲状腺腫の発症は極めて稀であることから、3mgが上限量とされました。
推奨量
推奨量は、必要量に推奨量算定係数1.4を乗じた値を丸めた130µgとされています。
付加量についてはそれぞれ、妊婦110µg、授乳婦140µgとされました。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
18~(歳) | 130µg | 130µg |
妊婦 | - | 240µg |
授乳婦 | - | 270µg |
摂取源
ヨウ素は海藻(昆布、海苔、昆布、わかめなど)に特に豊富に含まれています。
その他、魚や卵にも含まれています。
また、食卓塩にヨウ化物またはヨウ素酸塩として、添加されていることもあります。
注意
ヨウ素は特定の医薬品との間で相互作用が認められ、一部の医薬品によってはヨウ素濃度に有害な作用を及ぼす場合があるため、ヨウ素摂取については医療スタッフと相談してください。
抗甲状腺薬
甲状腺機能亢進症の治療に使用されるチアマゾールなどの抗甲状腺薬は、高用量のヨウ素と合わせて服用すると、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤
主に高血圧の治療に使用されるベナゼプリル、リシノプリルなどのACE阻害剤は、ヨウ化カリウムと合わせて服用することで、高カリウム血症のリスクが高まる可能性があります。
カリウム保持性利尿
スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬と一緒にヨウ化カリウムを服用すると、高カリウム血症のリスクが高まる可能性があります。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました!
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このページは、厚生労働省の日本人の食事摂取基準と、ODSのDietary Supplement Fact Sheetsの各栄養素ごとの情報を参考にし作成しています。
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