基本情報
リン(Phosphorus)は原子番号15、元素記号Pの窒素族元素の一つです。
リンは、有機リンと無機リンに大別でき、吸収率はそれぞれ20~60%と90%以上です。
成人の生体内に存在するリンのうち、およそ85%が骨や歯などの骨組織、およそ14%が軟組織や細胞膜に、残りが細胞外液に存在しており、最大で850gのリンが存在します。
機能
リンは、カルシウムとともに骨格を形成するだけでなく、ATPの形成、その他のDNA・RNAの合成や、エネルギー代謝などに必須の成分です。
摂取量の過不足によるリスク
摂取不足によるリスク
- 通常の食事では不足や欠乏することはありません。
- 低リン血症は、食欲不振、貧血、近位筋力低下、骨痛、骨軟化症、麻痺、混乱などを引き起こします。
- ほとんどの場合、低リン血症は、副甲状腺機能亢進症、尿細管欠損症、糖尿病性ケトアシドーシスなどの病状によって引き起こされます。
過剰摂取によるリスク
- 腎機能が正常なときは、リンを過剰に摂取すると腎臓からのリン排泄を促進し、血中のリン濃度を基準範囲に維持するように働くため、血清リン濃度は基準範囲に保たれます。
- 食品添加物として多量に摂取した場合、副甲状腺機能の亢進を来すという報告があります。
- 腸管におけるカルシウムの吸収を抑制するとともに、食後の急激な血清無機リン濃度の上昇により、血清カルシウムイオンの減少を引き起こし、血清副甲状腺ホルモン濃度を上昇させます。
摂取量
必要量
アメリカ・カナダの食事摂取基準では推奨量を算出していますが、日本人に関する情報はほとんど見当たらなかったことから、必要量と推奨量は設定せず、目安量を設定することとされました。
上限量
リンの摂取量と各種ホルモンの関係性についての研究はあるものの、測定方法が試験により異なることや、日本人での摂取量とホルモンの関係などについて十分な科学的根拠が得られていません。
よって、リン摂取量と血清リン濃度上昇の関係に基づき、上限量を設定すること
が現時点では最も妥当な方法と考えられ、3,000mg/日が成人の上限量とされました。
目安量
平成28年国民健康・栄養調査によると、リンの摂取量の中央値は957mg/日でした。
ただ、この調査には加工食品に添加されているリンの量は加算されていないため、実際の摂取量はこの値より多いと考えられます。
そのほか、いくつかの報告においても国民健康・栄養調査とほぼ同程度の値であることから、男女別の摂取量の中央値の中で最も少ない摂取量が目安量とされました。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
18~(歳) | 1,000mg | 800mg |
妊婦 | - | 800mg |
授乳婦 | - | 800mg |
摂取源
リンは、乳製品、肉、魚、卵、ナッツ類、豆類、野菜、穀物などに含まれています。
食品中には、主にリン酸塩とリン酸塩エステルの形で存在していますが、穀物や種子に含まれるリンは、貯蔵形態であるフィチン酸の形をしています。
ただ、人間などの単胃動物はフィチン酸の分解に必要な酵素(フィターゼ)の活性が弱いため、フィチン酸の多くは吸収できません。
注意
リンは特定の医薬品との間で相互作用が認められ、一部の医薬品によってはリン濃度に有害な作用を及ぼす場合があるため、リン摂取については医療スタッフと相談してください。
制酸剤
マーロックスなどの水酸化アルミニウムを含む制酸剤を長期服用している場合、低リン酸血症を引き起こす可能性があります。
また、炭酸カルシウムを含む制酸剤も、リンの吸収を減少させる可能性があります。
下剤
リン酸ナトリウムが含まれている一部の下剤を服用することで、血清リン酸塩濃度が上昇する可能性があります。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました!
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このページは、厚生労働省の日本人の食事摂取基準と、ODSのDietary Supplement Fact Sheetsの各栄養素ごとの情報を参考にし作成しています。
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