基本情報
脂質は、水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物です。
脂肪酸は、水素と炭素のみからできている炭化水素鎖の末端にカルボキシル基を有し、総炭素数が4〜36の分子です。
カルボキシル基があるので生体内での代謝が可能になり、エネルギー源として利用され、また細胞膜の構成成分になることができます。
脂肪酸には炭素間の二重結合がない飽和脂肪酸、1個存在する一価不飽和脂肪酸、2個以上存在する多価不飽和脂肪酸があります。
さらに、多価不飽和脂肪酸はn-3系脂肪酸と n-6系脂肪酸に区別されます。
二重結合のある不飽和脂肪酸には幾何異性体があり、トランス型とシス型の二つの種類があります。
自然界に存在する不飽和脂肪酸のほとんどはシス型で、トランス型はわずかです。
中性脂肪は、グリセロールと脂肪酸のモノ、ジ及びトリエステルであり、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール(トリグリセライド、トリグリセロール、中性脂肪)といわれます。
コレステロールは、四つの炭素環で構成されているステロイド骨格と炭化水素側鎖を持つ両親媒性の分子であり、脂肪酸とはその構造が異なります。
機能
脂質全体には、必須栄養素としての働きはありませんが、多価不飽和脂肪酸であるn-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸必須栄養素です。
脂質は、細胞膜の主要な構成成分であり、エネルギー供給源として重要な役割を担っています。
くわえて、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)やカロテノイドの吸収を助けます。
脂肪酸は、炭水化物・タンパク質よりも、1g当たり2倍以上のエネルギー価を持つことから、ヒトはエネルギー蓄積物質として優先的に脂質を蓄積すると考えられています。
コレステロールは、細胞膜の構成成分であり肝臓において胆汁酸に変換されます。
また、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体となります。
n-6系脂肪酸と n-3系脂肪酸は、体内で合成できない為、必須脂肪酸と考えられています。
摂取量の過不足によるリスク
摂取不足によるリスク
n-6系脂肪酸と n-3系脂肪酸は、体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症します。
過剰摂取によるリスク
飽和脂肪酸は、高LDLコレステロール血症の主な危険因子の一つであり、循環器疾患(冠動脈疾患を含む)の危険因子でもあります。
摂取量
脂質は、エネルギー産生栄養素の一種であることからたんぱく質や炭水化物の摂取量を考慮して設定する必要があります。
このため、脂質の食事摂取基準は、目標量として総エネルギー摂取量に占める割合で示されました。
また、飽和脂肪酸については、生活習慣病の予防の観点から目標量を定め、エネルギー比率で示されました。
一方、必須脂肪酸である n-6系脂肪酸及び n-3系脂肪酸については、目安量を絶対量(g/日)で算定されました。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、体内合成が可能であるため、必須栄養素ではありません。
その一方、高LDLコレステロール血症の主なリスク要因の一つであり、心筋梗塞を始めとする循環器
疾患の危険因子でもあります。
また、肥満の危険因子としても忘れてはならないことから、目標量を算定すべき栄養素です。
目標量
既存の研究成果を基に目標量(上限)を算定することは困難なため、日本人が現在摂取している飽和脂肪酸量を測定し、その中央値をもって目標量(上限)とされました。
最近の調査で得られた摂取量(中央値)を基に、活用の利便性を考慮し、目標量(上限)を7%エネルギーとされました。
妊婦・授乳婦においても、生活習慣病の発症予防の観点から見て、同年齢の非妊娠・非授乳中の女性と異なる量の飽和脂肪酸を摂取すべきとするエビデンスは見いだせないことから、同じ目標量(上限)とされました。
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢(歳) | (g/日) | (%エネルギー) | (g/日) | (%エネルギー) |
18~29 | 17.4 | 7.6 | 14.1 | 8.2 |
30~49 | 15.7 | 7.1 | 14.4 | 7.9 |
50~64 | 15.4 | 6.5 | 14.1 | 7.5 |
65~74 | 14.5 | 6.4 | 13.3 | 6.9 |
75~ | 13.1 | 6.2 | 11.4 | 6.5 |
n-6系脂肪酸
n-6系脂肪酸には、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などがあり、γ-リノレン酸やアラキドン酸はリノール酸の代謝産物です。
生体内では、リノール酸を合成することができないので、経口摂取する必要があります。
日本人が摂取するn-6系脂肪酸の98%はリノール酸です。
目安量
平成 28 年国民健康・栄養調査から算出されたn-6系脂肪酸摂取量の中央値を1歳以上の目安量(必須脂肪酸としての量)とされました。
年齢(歳) | 男性(g) | 女性(g) |
---|---|---|
1~2 | 4.30 | 4.48 |
3~5 | 6.29 | 6.20 |
6~7 | 8.06 | 7.24 |
8~9 | 8.15 | 7.36 |
10~11 | 10.12 | 8.45 |
12~14 | 10.73 | 9.17 |
15~17 | 12.62 | 9.13 |
18~29 | 10.67 | 8.43 |
30~49 | 10.44 | 8.57 |
50~64 | 10.53 | 8.64 |
65~74 | 9.46 | 8.21 |
75~ | 8.25 | 7.23 |
妊婦 | - | 9.13 |
授乳婦 | - | 10.17 |
n-3系脂肪酸
n-3系脂肪酸は、体内で合成することができず(他の脂肪酸からも合成できない)、欠乏すれば皮膚炎などを発症することから必須脂肪酸とされています。
生理作用は、n-6系脂肪酸の生理作用と競合して生じるものもあります。
日本人にとって最も摂取量の多いn-3脂肪酸はα-リノレン酸です。
n-3脂肪酸はα-リノレン酸、EPA・DPA、DHAに大別されることから、それぞれの健康効果についても研究が進められています。
目安量
n-3系脂肪酸の必要量を算定するために有用な研究は十分には存在していませんが、日常生活を自由に営んでいる健康な日本人には欠乏が原因と考えられる症状の報告はありません。
よって、目安量は現在の日本人のn-3系脂肪酸摂取量の中央値を用いることになりました。
年齢(歳) | 男性(g) | 女性(g) |
---|---|---|
1~2 | 0.71 | 0.75 |
3~5 | 1.13 | 0.99 |
6~7 | 1.59 | 1.28 |
8~9 | 1.39 | 1.31 |
10~11 | 1.58 | 1.64 |
12~14 | 1.91 | 1.59 |
15~17 | 2.16 | 1.64 |
18~29 | 1.92 | 1.62 |
30~49 | 2.03 | 1.59 |
50~64 | 2.16 | 1.85 |
65~74 | 2.23 | 1.99 |
75~ | 2.09 | 1.83 |
妊婦 | - | 1.48 |
授乳婦 | - | 1.81 |
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました!
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このページは、厚生労働省の日本人の食事摂取基準、を参考にし作成しています。
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