基本情報
葉酸(ビタミンB9)は水溶性のビタミンB群の一つです。
狭義の葉酸は、p-アミノ安息香酸にプテリン環が結合し、もう一方にグルタミン酸が結合した構造を持ちますが、自然界には稀にしか存在しません。
一方、食品中には異なる構造を持ったポリグルタミン酸型のN5─メチルテトラヒドロ葉酸が存在します。
食事摂取基準は狭義の葉酸の重量で設定されました。
機能
葉酸は、核酸(DNAやRNA)の合成に関与しているため、細胞の増殖と深い関係にあります。
また、アミノ酸の代謝においても、一炭素転移の補酵素または補助基質として機能します。
摂取量の過不足によるリスク
摂取不足によるリスク
- 骨髄に巨赤芽球が出現する貧血である、巨赤芽球性貧血(ビタミンB12の欠乏でも発生します) を引き起こすことがあります。
- 舌や口腔粘膜に痛みを生じたり、浅い潰瘍を形成したりすることがあり、皮膚、毛髪、または指爪の色素沈着に変化が認められます。
- 血中ホモシステイン濃度が上昇することで、動脈硬化の引き金等になります。
- 母親の葉酸塩摂取量不足は、神経管閉鎖障害の乳児の出産、低出生体重児、早産、胎児発育遅延とも関連しています。
過剰摂取によるリスク
- 通常の食品のみを摂取している者で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告はありません。
- 悪性貧血の患者に狭義の葉酸が多量に投与され、神経症状が発現したり悪化したりした症例の報告があります。
摂取量
必要量
巨赤芽球性貧血を予防するためには、赤血球中の葉酸濃度を一定以上に維持することが必要であると報告されており、この濃度を維持できる最小摂取量は、200μg/日程度であろうとする研究報告があります。
このことから、成人の推定平均必要量は200μg/日とされました。
妊娠時は、葉酸の分解及び排泄が促進されるとする報告があることから、妊婦(中期・後期)の付加量は200μg/日とされました。
ただ、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外から400µg/日摂取することが望まれます。
授乳婦の付加量は、80μg/日とされました。
上限量
食事性葉酸の過剰摂取による健康障害の報告は存在しないことから、食事性葉酸に対して上限量は設定されませんでした。
ただ、葉酸のサプリメントや葉酸が強化された食品から摂取された葉酸に限っては、18μg/kg(体重)が上限量として設定されました。
推奨量
推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とされています。
妊婦(中期・後期)における推定平均必要量の付加量は240μg/日とされています。
また、授乳婦の付加量は、100μg/日とされています。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
18~(歳) | 240μg | 240μg |
妊婦(初期) | - | 240μg+400μg(サプリメント等) |
妊婦(中期・後期) | - | 480μg |
授乳婦 | - | 340μg |
摂取源
葉酸は野菜、果物、ナッツ類、魚介類、卵、乳製品、肉など多くの食品に含有されています。
特に、ホウレン草、レバー、アスパラガスおよび芽キャベツは含有率が高いです。
注意
葉酸は特定の医薬品との間で相互作用が認められ、一部の医薬品によっては葉酸濃度に有害な作用を及ぼす場合があるため、葉酸摂取については医療スタッフと相談してください。
メトトレキサート
がんや関節リウマチの治療に用いられる葉酸拮抗薬であるメトトレキサートを服用している患者は、葉酸がメトトレキサートの抗がん作用を妨げるおそれがあります。
抗てんかん薬
てんかん、精神疾患および他の疾患の治療に用いられるフェニトイン、カルバマゼピンのような抗てんかん薬は、血清中の葉酸値を低下させることがあります。
サラゾスルファピリジン(スルファサラジン)
主に潰瘍性大腸炎の治療に用いられるサラゾスルファピリジン(スルファサラジン) は、腸管での葉酸塩吸収を阻害し、葉酸塩欠乏症を引き起こすおそれがあります。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました!
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このページは、厚生労働省の日本人の食事摂取基準と、ODSのDietary Supplement Fact Sheetsの各栄養素ごとの情報を参考にし作成しています。
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