有酸素運動が脂肪燃焼に適している理由

aerobic_exercise_fat_burning_Eyechatch 運動解説
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はじめに

体脂肪の燃焼というと強度の高い運動をイメージする方も多いと思います。

強度の高い運動は強度の低い運動と比べ消費カロリーが多いというメリットはありますが、関節の痛みや疲労の蓄積などから『続けにくい』というデメリットがあります。

対して、有酸素運動などの強度の低い運動は日々の生活の中で取り入れやすいものが多く、脂肪燃焼の観点では強度の高い運動より優れています。

今回は、そんな有酸素運動が脂肪燃焼に適している理由と脂肪をエネルギーにするメカニズムについて解説します。

運動のエネルギー

人は様々な筋肉を動かすことで歩行などの運動を行っています。
そして筋肉の直接的なエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)であるため、人は複数の方法でATPを産生しています。

ATP(アデノシン三リン酸)

atp

ATPはアデノシンにリン酸が3つ付いたものです。
ATPが加水分解すると3つのリン酸の内、1つのリン酸が分離し、その際にエネルギーを産生します。
ATPはADP(アデノシン二リン酸)へ変わります。
ATPは筋線維中にわずかしかないため、激しい運動ではすぐに使いきってしまいます。

エネルギー代謝(有酸素系)

ATPを作り出す経路は大きく3つあり、有酸素運動のような長時間継続できる運動(強度の低い運動)や安静時では主に有酸素系の経路が使用されます。
有酸素系の経路では、体内の脂肪酸やピルビン酸などが細胞内のミトコンドリアで酸化される過程でATPを合成しています。
有酸素系はATPを多量に合成できるほか、運動の障害となるような副産物を産生しないという特徴があります。
同じ時間当たりでは低強度の運動に比べ高強度の運動の方が消費カロリーは多いですが、使用されるエネルギー源は脂肪酸(脂質)ではなくグリコーゲン(糖質)が主に使用されます。

有酸素系エネルギー代謝におけるATP合成の仕組み

有酸素系のエネルギー代謝において、ATPは各細胞内のミトコンドリアにて合成されています。

ミトコンドリア

mitochondria

ミトコンドリアは、細胞を構成する組織の1つであり、細胞全体の約10〜20%を占めており1つの細胞におよそ100個~2000個含まれています。
ミトコンドリアは極めて運動性の高い細胞小器官で、細胞質内を微小管に沿うように移動したり、エネルギー(ATP)消費量が多い部位に局在していたり、ミトコンドリア同士で融合や分裂をして、常に柔軟に変形していることが報告されています。

β酸化

体脂肪(中性脂肪)はホルモン感受性リパーゼという酵素によって、脂肪酸とグリセロールに分解されます。

脂肪酸のβ酸化は、ミトコンドリアのマトリクスで行われるアシルCoAからアセチルCoAを産生する回路です。
アセチルCoAはアシルCoAの一つでもあります。

脂肪酸はまずアシルCoAに活性化されますが、アシルCoA単体ではミトコンドリアの内膜を通過できないので、カルニチンと一時的に結合しミトコンドリア内に取り込まれます。

β_oxidation

X個-2個の炭素のアシルCoAはX個の炭素のアシルCoAとして次のサイクルを繰り返します。

β酸化ではミトコンドリア内に取り込まれたアシルCoAから炭素を2つずつアセチルCoAとして切り離します。
残った炭素を持つアシルCoAはβ酸化を繰り返し、すべてアセチルCoAになるまで続きます。

炭素が奇数個の場合、β酸化を繰り返すと最終的にプロピオニルCoAが残ります。
プロピオニルCoAはスクシニルCoAに変換され、TCA回路の後半で使用されます。

TCA回路

tca_cycle

クエン酸回路とも呼ばれるTCA回路は、ミトコンドリアのマトリックスで行われる環状の代謝経路です。
TCA回路は大きく2つに分かれており、前半ではオキサロ酢酸とアセチルCoAをスクシニルCoAに変換する過程で二酸化炭素を放出します。
後半ではスクシニルCoAをオキサロ酢酸に戻し、回路の前半で再利用されます。
代謝全体では9段階ありそのうちいくつかは一方的に代謝されるため、TCA回路を”完全に”逆行することはできません。

呼吸鎖

タンパク質や酵素から構成される5つの複合体によってマトリックスに存在する物質(NADHやコハク酸)は水に変換され、その過程で水素イオンを産生し膜間スペースへ運び出します。
その際、複合体から漏れ出した電子によって、酸素分子は活性酸素の一種であるスーパーオキシドへ変化します。
スーパーオキシドは抗酸化酵素(SOD)が酸素と過酸化水素に変換し、過酸化水素は別の抗酸化酵素によって水へと変換されます。

ATP合成酵素

atp_synthase

ATP合成酵素は水素イオンを用いて回転するモーター(以降、水素モーターとします。)とATPを用いて回転するモーター(以降、ATPモーターとします。)の2つからなっており、それぞれ別の方向で回転しています。
このうち、水素モーターは細胞内のミトコンドリアの内膜に埋まっており、膜間スペース内の水素イオンがマトリックスに流れる際に回転します。
一方、ATPモーターは単独でATPを加水分解でADPとリン酸に分解し回転します。

膜間スペース内の水素イオンが多いとき、水素モーターはATPモーターの回転方向を強制的に変更し、ADPとリン酸からATPを産生します。また、膜間スペース内の水素イオンが少ないと、ATPモーターは水素モーターの回転方向を強制的に変更し、水素イオンを移動させます。

atp_synthase(synthesis&decomposition)

まとめ

今回は、有酸素運動が脂肪燃焼に適している理由と脂肪をエネルギーにするメカニズムについて解説しました。

有酸素運動と言えばサイクリングやランニングなどハードルが高く思えますが、歩くだけでも有酸素運動です。

体質の改善には小さな努力の積み重ねが必要不可欠なので、続けれる運動を日々の生活に取り入れましょう!

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました!
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